睡眠障害相談室はヴァージョンアップしました。
このページは更新していませんから、古い内容になっています。
リンクは、新しいページにお願いします。
5秒後に自動的に新トップページに移動します。
移動しない時は下記のリンクからどうぞ

睡眠障害相談室トップページへ移動


生体リズム(概日周期)異常のコーナー     2001年1月15日更新

このコーナーでは、24時間の生活リズムの乱れる症状について見ていきます。


1.概日周期・体内時計について
2.夜型と朝型
3.睡眠相後退症候群
4.時差ぼけについて




1.概日周期・体内時計について

みなさんの脳の中に「時計」があるということを聞いたことがある人は多いでしょう。この時計は、普通、みなさんが使う機械の時計と同じように、自分で意識していなくても勝手に24時間の時刻を刻みます。この時計があるために、例えば、徹夜した場合、深夜から、明け方にかけて、どんどん、どんどん眠くなっていくのに、なぜか夜が明ける時間になると、全然、眠っていないのに、目がすっきり覚めてくるということが起きます。この体内時計の詳細については、私の講演の原稿を参考にして下さい。ただ、ひとつだけ、非常に重要なことは、体内時計は非常に狂いやすく、毎日ちゃんと調整が必要だということです。そして、その調整を行う最も重要なのものは、光です。1日のうち、まだ夜の明けない早朝から、午前中の早い時間までは、光に当たると、時計が進みます。(つまり「体内時計が9時」ですと言っていたら、光をあてると、「もう10時です」に変わる)逆に夕方から、深夜までの時間に、光に当たると、時計が遅れます。(つまり「体内時計が夜9時」ですと言っていたら、光をあてると、「まだ夜の8時です」に変わる)ということは、朝寝坊して、夜ふかしすると、時計は遅れて、後ろにずれてしまいます。そして、例えば、もし1時間体内時計が遅れたら、翌日の朝、7時に起きようと思っても、体内時計はまだ6時をさしているので、「まだ眠いよ。寝かせておいて。」となるわけです。規則正しい生活をするためには、「早寝早起き」が大切という、言い古された言葉も、科学的には、このような意味があります。


2.夜型と朝型

朝、いつも目がすっきり覚めて、午前中から調子の良い朝型の人と、いつも目覚めが悪く、午後から調子があがり、日が暮れてからも元気に深夜まで働ける夜型の人がいるのは、みなさんご存知ですね。そして、ご自分がどちらかも。この朝型・夜型については、一卵性双生児の研究などから、生まれつきの遺伝的なものというよりは、教育や環境による生活習慣による部分が非常に大きいとされています。ですから、基本的には、自分の努力で、このタイプを変えることが可能です。特に夜型の人が朝型に変えたいという希望をよく聞きますが、夜型の人は体内時計が遅れがちになっているので、毎日気をつけて早朝に体内時計をリセットすることと、朝、すっきり起きるために、しっかり睡眠を取ることが大切です。睡眠不足(夜更かし)をすれば、どんな人でも時計が遅れますから(1.概日周期・体内時計の機構参照)夜型になるのはしかたありません。
ただ、遺伝的な原因が大きな要素をしめることも、まれにはあります。2001年になって、体内時計の遺伝子のひとつが変異を起こしているために、非常に早起きの「超」朝型になっていると思われる家系が報告されました。
さらに、最近の研究によると、体内時計は、ほとんど正確に24時間で、個人差は30分程度しかないとされています。しかし、この30分の微妙な違いが、実際の生活では、例えば、起床・睡眠時間としては、2時間程度の差になることも示されています。細かい計算式などは省略しますが、30分のズレが、24時間の中で数時間まで増幅されるということです。ですから、従来言われてきた以上に、遺伝的な影響もあるのかもしれません。

3.睡眠相後退症候群

どんな状態なの?=>簡単にいえば、毎日眠る時間が少しずつ遅れてずれていき、ひ どい場合には、昼夜逆転したりしてしまう状態です。誰にでも、これに似た経験はあ るはずです。たとえば、夜更かしして、翌日寝坊し、次の日も早く寝付けないために、 夜型になってしまうような時です。本当にひどい人の場合は、本人の努力や、生活態 度によらず、毎日必ず、だんだん時間がずれて、2−3週間に一度、会社や学校にも 行けない状態になってしまいます。ただ、生活習慣などから引き起こされている場合 も多く、原因を見究めれば、割と簡単に解決できるようです。

どうしてなるの?=>もともと人間のリズムは約24時間です(以前は25時間と言 われていましたが、最新の研究では、ほぼ24時間です)しかし、これはいろいろな 環境因子で、毎日修正されます。例えば、朝早く日の光に当たると、リズムは短くな り、夜遅く、日の光に当たるとリズムは長くなります。お昼前後は、光にあたっても、 リズムはあまり変化しません。ですから、夜ふかしして、明るい部屋でテレビを見て いて、翌日の朝は、寝坊して、10時くらいに光に当たったのでは、確実に、時計は 遅れます。この場合、睡眠を長く取ったかどうかは、関係しません。健康な状態では、 夜多少遅くまで起きていて時計が遅れても、翌日早く起きれば、また時計を進めるこ とができて、24時間に調節できるのです。その場合、多少睡眠不足になるわけです が、それは後日、早く眠れる日に取り返します。悪循環の場合は、上に書いたように、 眠れない(夜更かしする)=>寝坊する(朝日に当たらない)=>翌日の夜眠くなら ない=>眠れない
となるわけです。
また、このような悪循環に陥る別の原因もいろいろあります。例えば、他の原因(ス トレスや鬱病など)で、睡眠不足でも眠れないために、リズムがずれることもよくあ ります。

どうしたらよいの?=>上に書いたような一般的な悪循環の場合、それをどこかで断 ち切るしかありません。若い人の場合、もっともよいのは、リセットする日を決めて、 早寝早起きをすることです。例えば、週に2回は必ず6時半頃の早朝に起きる日を決 めて、その日は、その前の晩、何時に寝ても、朝早く起き、昼寝などをせずに1日頑 張ります。そして、その日の夜は夕食後、どんなに早くても、眠くなった時間に眠る ようにします。そして、一番大事なのは、その翌日も早く起きる事です。そして、こ の二日は、起床後はなるべく1時間弱屋外に出て、外の光を浴びます。これで、通常、 リセットされるはずです。その後は、再び、悪循環に陥らないように、規則正しく生 活をします。

4.時差ぼけについて

時差ぼけは、飛行機で時差がある場所に移動した時に、体内時計が現地の時間に合うまでに不適応症状を起こすことで、英語ではジェット・ラグ(jet lag)と呼びます。ほとんどは、睡眠の異常で、日中ひどく眠くなったり、夜、寝付きが悪くなったり、中途覚醒が起きたりします。東回り、日本からだとハワイなどに旅行した場合は、時計が「先に」進み、ヨーロッパなどへ西回りに旅行した場合は、時計が「後ろに」遅れます。帰路は逆です。一般的には、東回りより西回りの方が適応が楽です。体内時計の周期は、ほぼ24時間ですが、朝、光にあたると、この周期が短くなり、夕方から深夜にかけて光にあたると、周期が長くなります。この性質を使って、時差ぼけをなるべく早く乗り切る工夫を以下に記します。なお、いずれの場合も、「睡眠時間と休息」をしっかり取ることが、楽に時差を乗り切るこつです。
1.東回りで時計が「先に」進んだ場合:移動後、もとの時間帯ではまだ夕方の時間に眠り、早朝の時間に起きる必要があります。体内時計を進めるために、眠くてもちゃんと早起きして、朝一番に、できれば日光に15分以上、当たるようにします。夜は、体内時計を遅らせないために、夜更かしして光にあたることは避け、少し早めに眠ります。この時、当然、あまり眠くないはずなので、軽い睡眠薬を飲むのもよいでしょう。またメラトニン(別項参照)が使える場合、夕食後の時間帯に飲むことで、体内時計をより早く進めることができ、軽い睡眠薬にもなって便利です。時差ぼけの「予防」として、移動する日の2−3日前から、移動後の場所の夕方の時間帯に合わせてメラトニンを飲んでおくと良いとも言われています。
2.西回りで時計が「後ろに」遅れた場合:日本では深夜の眠い時間にも起きている必要があり、朝は、ねぼうしている状態になります。夕方、いちばん眠くなる時間帯に眠ってしまっても決して悪くはありませんが、体内時計の観点からは、夕方に屋外を散歩したりすることにより、光で体内時計を遅らせ、眠気も解消することができます。朝は、カーテンをきっちり閉めて部屋を暗く保ち、目が早く覚めてしまっても、日の出までは寝室の中に、いるべきでしょう。
3.時計が逆転する場合:日本からアメリカ東海岸に移動すると行きも帰りも、ほぼ時間が逆転してしまいます。動物実験では、時計を逆転させた場合、適応の仕方が個体によって変化し、時計を徐々に進める、遅らせる、時計が狂う(数日間、めちゃめちゃなリズムになる)の3つのパターンになります。上述のように時計を遅らせる方が体には楽なので、少しずつ遅らせる方向で時差を乗り切る方がよいと考える方がいるかもしれませんが、一般的には到着地の日中に仕事をしたりする必要があるため、時計を進める方向で、時差を合わせる方がよいでしょう。そのための工夫の仕方は、1.を参照して下さい。

メラトニンについて

メラトニンは、日本では認可されていませんので手に入りません。しかしアメリカではビタミン剤と同じ扱いで、スーパーマーケットでも買えますし、空港の売店にも置いてあり、最近は買って帰る人も多いので紹介します。メラトニンは、脳の中の松果体という場所で作られるホルモンで、体内時計が夜になると分泌が増えます。そのため、時差ぼけの調節や軽い睡眠薬として使用されます。ただその効果には疑問を持つ人もいて、意見が別れています。メラトニンが、直接、眠気を強める作用は非常に弱いようですが、体温を下げる作用、軽い倦怠感(だるさ)をもたらす作用があり、そのため、間接的な睡眠導入作用があります。また、概日周期の面からは、体内時計を「前に進める」作用が強いので、時差ぼけには、ある程度有効と考えられます。錠剤は、1,3,6mg(ミリグラム)のものが、主流ですが、催眠作用を期待する場合は3mgは必要です。メラトニンは、体内でも作られているホルモンですから、時差ぼけ対策などに、短期間の服用なら、ほとんど副作用の心配は不要です。日本で認可されていないのは、危険だからではなく、あまりにも安い薬なので、もうからないからです。


この項の最初に戻る


トップページに戻る